春なのだ
桜前線もやってきた。
春なのだ。
車で道を走っていると、引越のトラックをそこここで見かける。
思えば、地方大学を卒業して、東京に勤めるようになって。
最初に住んだのは、千葉の幕張だった。
ほんの20平方メートルほどのワンルーム。
でも、六畳一間のボロ屋住まいから引っ越したそこは、
フローリング、ユニットバス付き、という夢のような住まいだった。
(大学時代は、畳六畳の漆喰壁、風呂共同・キッチン共同・洗濯機共同という生活…
それも今からすればすごく懐かしくいとおしい、けど。)
大学時代は、自分の電話すらなく(ケータイなんてとんでもない)、
遠距離恋愛の年下の彼女と深夜、凍るように冷たい廊下で
アパート住人共同使用のピンク電話(今もあるんかいな)で、
数時間、あれこれと話したり、ケンカしたりしたことを思い出す。
そして就職を機に引っ越したのが、一人の城、ワンルーム。
電話だって引いたし、風呂もいつだって入り放題。
もちろん、彼女だってこの部屋に呼んだし、
一緒に買い物をして料理したり、ビデオを見ながら酒を飲んだり、
音楽を聴いたりして。
そんな部屋から引っ越したのは、
社会人になって4年くらいが経った頃か。
間はあったけれど7、8年付き合った彼女と別れ、仕事も変わり。
都心ではないけれど、地名に「東京都」が付く今の住所に越してきた。
そしてしばらくして新たな出会いがあり、更に時間は経って結婚し、別れ。
今度は、引っ越さなかった。
でも、しばらくの間、彼女の部屋にしていたスペースは、
手をつけられなかった。変えられなかった。
しばらくは、そのまま、だった。
で、今。
付き合っている人、という件に関しては諸々悩ましいところはあるけれど。
今も、この部屋で、生きてます。
酒を飲み、悩み、時にウルッとしながら、
日々の鼓動を刻んでいるワタクシなのです。