#0005 シルヴィ・ギエム「ボレロ」@市川市文化会館

最後のボレロ!


見てきました、ギエムのボレロ
そう、「最後のボレロ」って言って
宣伝してたやつです。
実は、この公演を知ったときにはあまり
見る気がしなくて、チケット手配してなかったんですが。
急に、知り合いが「ギエムのボレロ、良かったよ〜!」と
メールをくれたので、見る気になったんです。


しかし、出足が遅かったため、
市川市文化会館での公演の、
しかもC席(2階席…)しか入手できず。


そのせいか、ボレロは正直、イマイチでした。
なんだろう、ギエムはすごくよく踊ってましたよ。
でも、何か、少なくとも私のいた席まで
伝わってくるものはなかったなぁ…。
原因を考えてみるに、ギエムって
ボレロのパワーを出すには、足が細すぎるんではないか、と。


跳躍していても、パワフルな躍動感ではないんですよ。
いや、S席で見てた人には
パワフルな躍動が伝わったのかもしれませんが。


しかし!
今回、見に行って「こりゃスゲェ!!」と思った演目も
あったのです。あぁ、よかった。ホントに。


それが、ギエムがソロで踊る「TWO」。
ラッセル・マリファント振付・アンディ・カウトン音楽による演目で、
これがメチャメチャカッコいい!!
これはもう、2階席だろうがどこだろうが関係ないスゴさ、です。


暗闇の中でステージ中央に浮かび上がるギエムと、
彼女を照らし出す、上からのライティング。
その光は、床に2メートル四方の「光の場」を作り出している。
アブストラクトなトリップホップ風の重い音が響く中、
シャープな動きを展開するギエム。
手がスッと旋回して光を切ったかと思うと、
後方へ伸ばしたつま先が闇と光の境界をなぞる。


時に高速に、時にゆらりとした動きを交えながら
紡ぎ出す、十分ほど(だったと思う)の演目。


記憶では、最初は2メートル四方全体が明るかったのですが、
後半では(いつのまにか?)四方の輪郭部分だけが明るくなり。
ギエムはその中央に区切られた四角い闇の中から、
周囲の「光の帯」へと手を伸ばす。
その手は、光へと伸び、そしてはじかれたように闇へ戻り、
また光へと伸び、再び戻り…。
夢を渇望する手、そう感じて、切なさにグッと来ました。
演出のよさとギエムの動きとが相まって、そりゃもう…!


あ、ちなみにこの日の他の演目は、
ギリシャの踊り」と「ドン・ジョヴァンニ」。
東京バレエ団の公演なので、
当然、東京バレエ団が踊るわけです。
決して、「動きがイマイチ」と思ったわけではないのですが、
日頃バレエをあまり見ないせいか、
いまいちピンときませんでした…。
多分、それらの演目自体があまり好きじゃないんでしょう。


…今ふと思ったのですが、
ちょっと勅使川原三郎の「NOIJECT」に通じる感覚もあったかな。
音とか動きとか、ですが。
でも、表現しようとしてる物は
たぶん正反対だと思います。
「Two」の方は、やっぱり(クールだけど)叙情、ではないかと。
それが泣けたんですね。
「NOIJECT」(生では見てませんが…)は
きっと、見ても私は泣かないと思います。