#0008 マーク・ライデル監督/ベット・ミドラー『ローズ』

…上で「また改めて…」なんて書きましたが、
どうにも気になってしまい、今、DVDを見直して
書いてみました。1979年の映画です。
ローズ [DVD]


これ、映画なんですが、音楽映像でもキーワード入れました。
ちょうどナンバリングも、
「映画」でも「音楽映像」でも#0008だったので…。


なんといっても、あえて「音楽映像」で
インデクス用のキーワードを入れたくなるくらい、
ベット・ミドラーのステージシーンがスゴいんですよ。
もともとNYのクラブで歌ったりしていたベット・ミドラー
監督が「ジャニスに通じるのはコイツだ〜!」と
渋る制作サイドにゴリ押しして抜擢したとか。
これが彼女のデビュー映画、なんです。
そして、その演技も壮絶なスゴさ。
とても、これが演技を初めてする人とは思えません。


もともと、ジャニス・ジョプリン
自伝的映画を作る、という話があったのを、
監督とプロデューサーが
“むしろ架空のスターを主人公にした方がいい”、っていうことで
方針を決めたらしいんですね。
その方が、事実を活かしながらも
自由に物語が展開できるから、っていう
理由らしいですが。


主人公ローズは人気のロックシンガーとして
バンドのメンバーたちと、ツアーに明け暮れる日々。
ツアーの移動に使うのは
シルバーのボディで機首には「ROSE」と描かれた自家用機、
ドラッグも酒も望めばすぐに手に入る。
でも、そんなローズの心は、常に愛を求めている…。


愛を求めるあまり、自暴自棄な生活を
続けるローズ。
ヘロインこそやめたものの、アルコール漬けの日々。
そんな中、出会ったテキサス出身の
「男らしい」男に惚れるけれど、
その彼すらもローズの生活についていけず
彼女の元を去ってしまう。


この映画のフィナーレは、
彼女のホームタウンで開催されるコンサート。
自分が育った故郷でのコンサートを前に、
男に去られ神経が高ぶるローズは
ハンドルの向くままに車でさまよい、
自分が通ったハイスクールのグラウンドに入り込み
ヨレヨレになりながら、コンサートが予定されているスタジアムの
スタッフに公衆電話から電話を入れる。
独りぼっちの私を迎えに来て欲しい、と。



この、公衆電話のシーンが泣けるんです。
この世界に独りぼっち、自分にできることは歌うことだけ…。
自分をこの世界に繋ぎ止めているものは、
歌、そしてそれを聴いてくれる聴衆しかない。
そんな切なさが、泣けます。
そしてなぜか、デビッド・ボウイのアルバム
「ジギー・スターダスト」(ASIN:の
ジャケ裏でボウイが電話ボックスの中に佇んでいる様子と
オーバーラップしてしまいました。
ジギーも、孤独だったんですよね。

 ジギー・スターダスト発売30周年記念アニヴァーサリー・エディション
(左がジャケ裏です)



この映画のラストは、哀しさの中で終わります。
そこに流れる、主題歌「ローズ」。

人は言う「愛は川みたいなもんさ
弱々しい葦なんか押し流されてしまう」
人は言う「愛はカミソリのようなもの
切られた魂は血を流しつづけるしかないんだ」
人は言う 「愛は飢えなんだ
終わりなく求めつづけるしかない」と


でも私はこう言う「愛は花」
あなたにとって それはただの
種子でしかないかもしれないけれど


傷つくことを恐れて
心は踊ることをおぼえようともしない
夢は目覚めることを恐れて
運に賭けようともしない
人は 奪われることを避けるために
与えることさえ恐れているのか
魂は 死を恐れるばかりで
生きることを学ぼうとしない


夜が 寂しすぎたとき
道が 遠すぎた時
あなたは思う 
愛はツキがあって 強いヤツだけが手にできるんだ、と


でも思い出して
冬、冷たい雪の下で寒さを耐えている種子は
太陽の愛を受けて
春にはバラを咲かせることを


(詞:Amanda McBroom/jackali訳)

この曲、ソングライターのアマンダ・マクブルームが、
車のラジオから流れてきたDanny O'Keefeが歌う曲「Magdalena」を聴き
インスパイアされて作ったものだとか。
(cf:Songfacts.com>The Rose-by Amanda McBroom
その曲の「あなたの愛はカミソリ 私は切られた傷口」という歌詞に対して
「ちょっと違う」と思ったのがきっかけらしいです。
「それなら、私にとっての愛って…?」と車を運転しながら
自問自答していて出来たのがこの曲、というわけ。
1979年のゴールデングローブで歌曲賞を受賞しています。


愛は、ツライ時を乗り越えて
いつかは花を咲かせる。
明けない宵闇はない、春の来ない冬はない。
そう信じていたいもんです。