ヒロシマ、という街で

ホテルからの眺め


一泊だけで、広島から帰ってきました。
まぁ、仕事ですから…。


今回は、サンルートホテルに泊まったのですが、
朝食会場となった15階にあるレストランからは、
市内の西側を流れる元安川
見事に見渡せます。


東京に住んでいると、大きな河が街の中を流れている場面には
あまり出会いませんが、
広島の街は、京橋川太田川、そして元安川という
大きな三本の川の間で
どこかゆったりとして見えました。


と、緑に囲まれた近代的なビル群の中で、
パッと目に入ったのは川べりに立つ、原爆ドーム
緑に囲まれて、そこだけが約六十年前の
「あの時」の様子を静かに伝えています。
そして左手に目を移せば、
どこかで見た記憶のある建築物が。
コンクリートのスリットで構成された2階部分、
そして1階部分は柱のみのピロティ空間。
そういえば…!記憶が蘇りました。
広島平和記念資料館です。
これは、丹下健三の設計によるもので、
資料館の南側に立つと、ピロティの空間越しに
慰霊碑(やはり丹下健三設計)、
そして慰霊碑が描くアーチの中には
原爆ドームが見える、という配置。
資料館、慰霊碑、原爆ドームという三者
一直線上に結びついているんです。
その位置関係について、何かの本の中で読んだなぁ、と。
この本でした。

日本の“地霊”(ゲニウス・ロキ) (講談社現代新書)
鈴木博之『日本の<地霊(ゲニウス・ロキ)>』講談社現代新書


いわゆるインテリ建築家、って
その場所性を読み解く、という意味で
「トポス(場)」とか「ゲニウス・ロキ(地霊)」とかよく言いますが、
正直言って、「この都市整備されきった現代日本
そんなにあちこちに際立ったトポスがあるのかよ?」と
懐疑的に思ってしまうわけで。
なんだか、あいまいな「場所性」をあまり敷延してしまうと
風水学に行ってしまうような気がして、
(いや、風水が悪いわけではありませんが)
どうにも、気持ちが引っかかってしまいます。
しかし!原爆ドームを含めたこの設計は、
まさにこの「場」の場所性をコアにしたもの。
この場でしかありえない設計ではないでしょうか。
今回、その平和記念資料館の前に立って
その場所性を確認することが出来なかったのが
非常に残念でした…。

cf:「建築マップ/広島平和記念資料館
http://www.arch-hiroshima.net/a-map/hiroshima/p-museum.html


それにしても、9.11テロから3年経った日の翌日。
「9.11では死者三千人でしょ、
 ヒロシマは二十万人だからね…」という
地元の人の言葉に、
沈黙するしかありませんでした。
そんな時、耳の奥に響いてくるのは
ありきたりですが、ジョン・レノンの「Imagine」。
いかに理想主義的だとしても、
そのレノンが語った世界を「想像」し、願わずにはいられません。