#0004 Jan Staller 『On Planet Earth』

jackali2004-09-08




『On Planet Earth -Travels in an Unfamiliar Land-』
ISBN:0893817309
Photographs: Jan Staller/Text: Luc Sante
Pub: APERTURE


直島に行った話(cf:日記/8月9日)のコメントの中で、
軍艦島のことをぼんやり考えていたら、
思い出したのがこの写真集。


といいながら、実はこの写真集には
廃墟はほとんど登場しません。
(廃墟っぽい建物内の写真もあるのですが、
その様子をよく見てみたところ、どうやら
廃墟ではないようです)
しかし、ページをめくって見えてくるのは、
ただただ、人のいない光景。
原子力発電所の建物、線路のポイント、風力発電の風車たち…。
そこでは、長時間露光とフラッシュとで照らし出された景色が、
時に悲しみに満ち、時に凍りそうな静寂に満ちて
映し出されているばかり。


この写真集の中で、
動きを感じさせるものと言えば、
風に揺れるゴルフ練習場のネットや、
荒野に立つ工業用設備から昇る炎のみ。
一枚だけ収録されている、人の後ろ姿がぼんやりと写るカットや、
牛たちが野原に立つカットなどでさえ、
むしろその人や牛の存在が
かえって静寂感を際立たせています。


人影のない光景、というのにどこか魅かれてしまうのかも知れません。
それはなぜなんだろう…。
廃墟、ってどうやら歴史的にも人々を惹きつけてきたようで、
そういえば英国式庭園でも、
フォリーと言われる「模擬廃墟」を
庭園の中にあえて配したりした、と
どこかで読んだ記憶が。
さらに拡張すれば、グロッタと呼ばれるイタリア発祥?の
洞窟型人工庭園なんかまで遡れるかも。
ポンペイや、誰も見たことがないアトランティス大陸
恋い焦がれる気持ちにも、
どこかで繋がっていくような気もします。


それは、
破滅への恐怖の裏返しとしての憧れ?
生命の源泉としてのカオスへの追慕?


滅びゆくもの、朽ちていくものへの関心って、その背後には、
どこか高い場所に立って
「あそこは滅びてるんだね〜、でも
 今、オレが立っている場所はきっと大丈夫!」と考えているのが
透けて見えているようで、どこか抵抗があったりもするのですが。


しかし、やっぱり私の中にも
そんな「人のいない光景/人の捨て去った光景」への
関心は、あったりして…。


うーむ。


廃屋を見ると、ドキっとしてしまうのはどうしてなんだろう。
畠山直哉宮本隆司、さらには杉本博司の写真に惹かれてしまうのは、
何故なんだろう。
「死」を想いたくなるのは、なにを求めてのことなんだろう……。


メメント・モリ=死を思え。
そう”正しく”唱えられるのは、
きっと、いつもは前を向いて生きている人だけなのでは
ないか、と思ってしまいます。
藤原新也*1のことがどうも好きになれないのは、
”正しい”かたちで死を語る彼の語り口に、
実は、ねたみに似た感情を持ってしまうからなのかもしれません。

*1:そのものズバリ「メメント・モリ」と題した著作あり