その川の向こう側へ

ブルース・スプリングスティーン「リバー」の歌詞、
やっぱり泣ける。

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俺は谷の底みたいな街からやってきた
父親の生き方をなぞるしかない街だった
俺とマリーは高校で出会い、
そうマリーが17歳の頃
緑の中へよくドライブしたね


俺たちは川へ行き
そこへ飛び込んで


そう、よくあの川へ行った


マリーから「妊娠した」ってだけ書いた手紙をもらい
俺の19歳の誕生日、労働組合に入って、上着を手に入れて
役場に行って、その上着を着てマリーと式を挙げた
祝福もなく、花もなく、ウェディングドレスさえなかったけれど
その夜、俺たちは川へ降りた
そして泳いだんだ
高校の頃、一緒に泳いだその川で


ジョンズタウンの会社で建設現場の仕事をもらった
でも不況のせいなのか、最近では仕事もあまりない
大事だと思っていたものは皆、消えてしまった
今となっては、昔を忘れたふりをするしかない、
そしてマリーもそのことに気付かないふりをするだけ
でも俺は、アニキの車を使って泳ぎにいったときのことは覚えている
日に焼けた彼女の肌を 水滴が伝って
夜更けに目がさめて、彼女の呼吸が判るくらい近くにまた抱きしめた


そんな記憶が呪いみたいに俺を苦しめる、
幻だったのか、もっと悪いものだったのか


川はもう干上がっていると知りながら
俺たちは川へと降りていく
昔、そうして泳ぎに行ったように

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