#0041 Bob Marley & The Waylers『Live!』

ライヴ!+1
ボブ・マーリーの名曲を一つ、と言われれば
私は、ベタでもこのアルバムの収録曲を挙げます。
「No Woman, No Cry」。


実はこの曲、初めてレゲエを聴いてみようと思ったときに
ボブ・マーリーのアルバム『Legend』を手に取ったんですが。
Legend (New Packaging)
その、いわばベスト盤に収録された曲の一つに
「No Woman, No Cry」というタイトルを見た*1とき、
「女がいなきゃ 泣くこともないのに」っていう
失恋を嘆く弱っちい歌なのかと早合点し、
タワレコのコピー「No Music No Life」が
 この、○○なけりゃ○○なし!のパターンですよね)
「なんか好きになれんなぁ…。いや、むしろ嫌い!」と
思ってたんです(笑)。
いちおう聴いたんですが、どうしても
その「めそめそ泣くボブ」のイメージがぬぐい去れず、
しばらく、再びボブ・マーリーのアルバムを手に取ることはなかったのでした。


でも、それから時間は経ち。
ふと再び、アルバム『Live!』を聴いてみたわけです。
あれは大学生の頃だったかなぁ。
ロンドンはライシアム・スタジアムでの、1975/6/18のライブを
収録したアルバムですね。


…これ、メチャメチャいいじゃん!!!と。
ウェイラーズのバーナード・ハーヴェイによるらしい
オルガン?のイントロがいきなり泣かせます。
観客のノリもいい感じで。
この曲、「Natty Dread」に収録されてるのがオリジナル録音だと思いますが、
全くアレンジが違います。
「Natty Dread」の方は、軽く、しかもBPM早めで。
やっぱり「Live!」版の荘厳ささえ感じるようなところがたまりません。



そして、歌詞を知ってみたら、
なんのことはない。
「No Woman, No Cry」は
「女がいなきゃ 泣くこともないのに」ではなく、
「泣くなよ、女」なのでした。

泣くなよ、オンナ…


トレンチタウンのスラム*2
おれたちが座ってたときのことを思い出すよ


おれたちが出会った善良な人たちの中に
混じり込んだ偽善者たちを観察してたよな


おれたちは 道のりの途中で 大事な友たちを亡くしもしたけれど
ここから先に見えるすばらしい未来の中にいるときも
過去を忘れちゃいけない
そう、だから涙を拭きなよ


泣くなよ、オンナ
かわいい大事な恋人、涙をながしちゃいけない
泣くなよ、オンナ…


トレンチタウンのスラムで
おれたちが座っていたときのことを思い出すよ
ジョージーが火をおこして
薪は夜通し炎を上げ続け
おれたちはトウモロコシの粥を作って
おまえと分けたんだった


おれにはこの二本の足は残っている
だから歩いていくんだ
おれが行ってしまっても…
すべてうまくいくさ
そう、すべてうまくいくよ
もう、すべてうまくいくんだ


だから、泣くなよオンナ、
かわいい大事な恋人、涙を見せるんじゃない
泣くなよ、オンナ…


てな感じでしょうか。
この歌詞の中で、「道のりの途中」と行っているのが
どういうことなのか私には判りませんが、
貧困との闘いなのか、
あるいは、ラスタの基本思想である約束の地・ザイオンへの帰還、なのか。


記憶の中で、友と囲んだ焚き火の焔といえば思い出すのは…。
中学生の頃だと思います、
札幌に住んでいたときに、自転車で支笏湖までキャンプに行ったときのこと。
そのキャンプ場での焚き火。
パチパチ、と時折、薪のはぜる音がするだけで、
辺りには静寂と暗闇が。
空は、信じられないくらい満天の星…。


記憶の中だけに、美化されているのかもしれませんが。
焔を見つめていたときの、
あのなんとも言えない気持ちが、今、こうして書いていて
蘇ってきました。
炎の向こうに、自分は何を見つめていたのか。


ちょっとだけ、あの日に戻ってみたい気もします。

*1:これ、アルバム『Live!』からの収録曲です

*2:ここ、原詩では"In the government yard in Trenchtown"です。この"government yard"っていうのは政府官邸の庭とかではなくて、たしか政府直轄地、という意味合いだったとどこかで読んだ記憶があります。しかし、原典が発見できない…。マーカス・ガーヴェイを取り上げた本だったか、あるいはレナード・ハウエルを取り上げた本だったかも。
レゲエ・トレイン―ディアスポラの響き ルーツ・オヴ・レゲエ―最初のラスタレナード・ハウエルの生涯
この、右の方(『ルーツ・オブ・レゲエ』エレン・リー著)、だと思いますが本棚に発見できず…。トレンチタウンは、ボブが住んでいた、いわゆるスラム街、です。

注:後日、本が見つかり、謎が解けました!詳しくは日記2006/2/23へどうぞ。