#0003 ローザス/「ビッチェズ・ブリュー/タコマ・ナロウズ」

ローザスを、さいたま芸術劇場に見に行ってきました。


会場に入ると、ステージ中央の上空には
スチールパイプで出来た直径1メートル弱ほどの
バスケットのようなものが吊られていて、
そこに乱雑に挿しこまれた何本もの蛍光灯が
付いたり消えたり。
ステージを囲う三方には、
布が張られたような質感の壁面が、
腰から下の部分があいた状態で立てられている。
そこから見える、行き交うダンサーたちの足。
そして、ステージ上の下手側にはDJが。
ちょいと退廃的なムードを感じさせつつ、
静かなグルーヴが漂い始める。ってとこでしょうか。


…でも、DJの繋ぎのBPMが合ってない…、イマイチ。
なんてことを考えていたら、
いつのまにか彼は舞台から消え。
次に登場したときに、彼はダンサーとして登場していたのでした。
そうか、だからDJヘタだったんだ(笑)。


で、全体としては
なかなかおもしろかったですよ。
今回は、ローザスの舞台にしては珍しく
(らしいです、今まで未見だったので何とも言えませんが)
インプロビゼーションが大きな割合を占めていた、とか。
まぁ、見た感じ、一連の動きのようなユニットはあって、
それをどこに持ってくるか、という辺りが
主な即興なのかも。


音楽は、「ビッチェズ・ブリュー」と題しているだけあって
マイルス・デイヴィスのアルバム
「ビッチェズ・ブリュー」からほとんどを持ってきているわけですが、
曲順もほぼアルバム通り、です。
「ビッチェズ・ブリュー」で始まり、
「スパニッシュ・キー」、そして
サンクチュアリ」「マイルス・ランズ・ア・ヴードゥー・ダウン」
と、いう流れで。
このアルバム、「マイルスからのロックへの回答」(笑)、なんていう
キャッチフレーズも付いているようですが、
エレクトリック・マイルスの代表的なアルバムですね。
聞き直してみると、やっぱカッコいい!

ビッチェズ・ブリュー+1


公演タイトルにある「/タコマ・ナロウズ」というのは
アメリカ・ワシントン州にある吊り橋のことだそうで。
なんでも、この橋は、その上を走る車による振動のリズムが
増幅され、崩れ落ちたらしいです。
ステージ中で、たしか「サンクチュアリ」が流れているときに
舞台背景にはこのタコマ・ナロウズ橋の大揺れしている様子の
記録フィルム?が映し出されてました。


今回、ローザスのダンスにはストリートダンスっぽい動きが
随所に取り入れられていたのが目に付きました。
まぁ、ストリートダンスの動きのおもしろい所を
コンテンポラリー的な流れの中に
再解釈して組み込んだ、というか。
ロックダンス風の手振り(トウェルとかクラップ)とか、
あるいはブレイクダンスのフットワークものとかの
動きが登場してました。
かなり軽めな動きにアレンジされてましたが。
音楽では、マイルスの曲以外にも、間で
スライの「Dance to the music」とか、ジミヘンの「fire」とかが
挿入されたりしてましたよ。


で、一番印象に残ったのは、実は
冒頭でも書いたDJダンサーのダンス!
彼がイイんですよ〜〜。
サルヴァ・サンチスというフリーランスのダンサーらしいです。
グルーヴもあり、なんというか「斜め」な動感があって。


他には、ひときわ長身で、
しかも不安定感を際立たせたムーブを多用していた
イグル・シシコは、なんだか
大倉孝二ナイロン100℃)っぽかったりして
ちょっと笑えました。あ、懐かしき「鳥人ベニー・ユキーデ」も
彷彿とさせたりして(笑)。


あとのダンサーは、あまり印象に残らなかったかなぁ。
あ、冒頭から登場して、カタい動きをしている女性ダンサーは
ちょっと気になりました。
演出なのかも知れませんが、なにしろ動きがカタいんですよ。
カッチリしている、というか、うねりが少ない、というか。
メンバーの中では背が小さめだったせいもあって
よけいにそう見えたのかもしれません。
エリザベット・ペンコヴァかな?
(cf:ローザス公式サイト>ダンサー紹介
http://www.rosas.be/Rosas/dancers.html


それにしても、全体的には
ダンサーたちがけっこう「楽しそう」でした。
実は私が見に行ったこの日、
ステージが終わった後にトークがあったんですが、
アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルローザス主宰)の
こむずかしそうな理屈を聞いてもしかたない、と思い、
見ずに退席。
…ダンス、見て楽しければいいじゃん?