#0019 ヘレン・メリルwith クリフォード・ブラウン

家々にともった明かりたち


今日は先日のライブの影響もあり、日本語パンクの気分が
体にしっかり残っているのですが、あえてコレ。
Helen Merrill』と題されたアルバムです(1954年リリース)。
ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン
(私の持っているCDは、もっと写真の色が薄緑っぽい感じでしたが)


ジャケには「helen merrill」と歌手の名前しか
書かれていないのですが、
さすがにそれだけではどうしようもないせいか、このアルバムは、
全編に渡ってフィーチャーされている
トランペッター、クリフォード・ブラウンの名を伴って
ヘレン・メリルwithクリフォード・ブラウン」と
呼ばれることが多いようです。


ジャケの切なげな叫び顔が、
ブルーノートのスタイリッシュなジャケとは
またひと味違って、このアルバムの雰囲気を
よく伝えているのでは。


少しかすれたようなヘレン・メリルの声が、
夜ひとりで静かに聴くには最適、です。
今日はあんなことがあったなぁ…とか、
そういえばあいつとしばらく連絡取ってないけど、何してるかなぁ…とか、
ボンヤリと考えたりして。
そういう気分の時に、ふと思い出したようにかけるのが
このCDだったりします。
私にとって似た位置づけのCDといえば、
男性ヴォーカル切なさNo.1の
チェット・ベイカー・シングス』でしょうか。
チェット・ベイカー・シングス



で、この『Helen Merrill』。
どれか一曲、といえばやはり切なさいっぱいの
超有名曲「You'd Be So Nice To Come Home To」。
でも、本来は楽しい曲(だと思う…)の
「Falling in Love with Love」や「's Wonderful」まで
どこか切なく感じるのは、このジャケの魔力でしょうか。


そうそう、今日CDのジャケットを見ていて気付いたのですが、
このアルバムのアレンジを手がけているのは、
御大クインシー・ジョーンズ
今でこそ「御大」のイメージですが、1933年生まれの彼は、
このアルバムリリース時にはなんと21歳!!
一方、この人生の酸いも甘いもかみ分けたような歌声の主人公、
ヘレン・メリルは1929年生まれだから、当時25歳。
シミジミ心に浸みるトランペットソロを聴かせる
クリフォード・ブラウンは1930年生まれの24歳。
うーん、若い!です。
しかし、クリフォード・ブラウンはこのアルバムリリースの
わずか2年後に没。
クインシー・ジョーンズヘレン・メリルは(多分)
まだご存命と思われますが、
この三人の出会いがアルバム『Helen Merrill』に
マジックを起こしたのでは、と
思わずにはいられません。
その出会いはたとえつかの間のものだったとしても、
このディスクに封じこめられた音楽には、
聴く人をちょっと切ない気持ちにさせながらも
その心の中に小さな優しさを呼び起こしてくれる、
そんな何かが織り込まれている気がします。


自分もこれからの人生で、このアルバムが与えてくれたものの
ほんの十分の一、いや何百分の一でもいい、
だれかの心に何かを残すようなことが出来るんだろうか…。
そんなことを、この『Helen Merrill』を聴きながら
シミジミ考えてしまったりします。