#0001 マシュー・ボーン/「白鳥の湖」

見てきましたよ、
マシュー・ボーンの「白鳥の湖」(at オーチャードホール)!
で、遅ればせながら書いてみました。


当日発表のキャストですが、
主なものはこんな感じでした。

王子=首藤康之
ザ・スワン/ストレンジャー=ジェイソン・パイパー(Jason Piper)
女王=オクサーナ・パンチェンコ(Oxana Panchenko)
執事=アラン・モーズリーAlan Mosley)
ガールフレンド=リー・ダニエルズ(Leigh Daniels)
幼年の王子=ギャブ・パーサンド(Gav Persand)


ところで、前から気になっていたんですが、
「女王」って皆さんどう発音してます?
私は「じょうおう」って言ってるんですが、
文字からすると「じょおう」ですよね。
ちょっとだけ不思議、です。


まぁ、そういうどーでもいいことは置いておき。
考えてみたら、コンテンポラリーダンス
今までもちょこちょこと見てきたのですが、
バレエは初めてだということに気付きました。
その最初が、マシュー・ボーン演出のステージ、というのも
ちょっと変な感じですが。
バリバリに古典的なバレエは
あの高いお金を払って見に行こう、と
これまで思えなかったんですよね。


まずは、そのダンスから。
やっぱり首藤、ジェイソン・パイパーの二人は
カッコいいですね〜!
パッと見、超絶テクって感じではないのですが、
そうと感じさせない自然なうまさなのかも。
この二人がキャストの日だったらいいなぁ、と思って
見に行っただけに、けっこう嬉しかったです。
気になったところと言えば、
群舞のシーンでのバラツキでしょうか。
意図されたもの(特に公園での白鳥群舞のなかでは)なんでしょうが、
なんだかザ・スワン(パイパー)の踊りを見ながら
他の白鳥たちが“踊らされている/振り付けをされている”感じが
してしまうんですよね…。
あそこは、他の白鳥たちの踊りが揃っていた方が
ザ・スワンが際立つように感じたのですが……。


実は、オーチャードホールのサイト
http://www.bunkamura.co.jp/orchard/event/swanlake/)で
ストーリー概略はちらっと読んではいたのですが、
その辺りの予備知識がないとちょっとツラいですね。
いや、人によっては「ストーリーを知らなくても
楽しめる」とは思いますが。
以下、概要。

幼年時代、女王からの愛を受けずに育った王子。
成長してガールフレンドを作っても
女王はその交際に反対。マザコンの彼は悲しみの日々。
彼女を追い、バーへ行けば騒動に巻き込まれ、
その様子をパパラッチされる始末。
失意の彼は、世を去ることを決意するが
夜の公園で見かけた白鳥の美しい姿に、心を救われる。
−−−
宮廷の舞踏会で、突然登場した謎の人物−ザ・ストレンジャー
公園で見た白鳥にうり二つのその姿を、王子はつい目で追ってしまう。
ザ・ストレンジャーは、その場に集まっていた各国の王女たちの
心をなびかせ、しまいには女王の心も掴む。
その様子を見て、怒りと嫉妬に震える王子は拳銃を手に取り、再び騒動に。
−−−
乱心のため、病院に隔離される王子。
やがて退院するものの、心の闇は晴れず、次第に
狂気の世界へと向かっていく。
宮殿の自室のベッドで、白鳥たち(の幻影?)に脅かされる王子。
ザ・スワンが登場し、白鳥たちの攻撃から王子を守ろうとするが、
精神的に完全に追いつめられた王子は、ついに絶命(?)。
しかし、天上でザ・スワンの腕に抱かれた王子は
安らぎを得る…

こんな感じなのですが、概要にしても長いですね、スミマセン(笑)。


で、よく判らなかったのが、
なぜ白鳥たちとザ・スワンが最後に来て敵対してるのか、というところ。
未だに謎、です(笑)。
で、気になってオリジナルの「白鳥の湖」のストーリーを調べてみたのですが。
バージョンによって結末へ至るあたりがいろいろ違うようですが、
だいたい次のような感じです。
(cf:「童話作家北村正裕のナンセンスの部屋 >白鳥の湖への旅」
http://homepage3.nifty.com/masahirokitamura/swanlake.htm )

王子ジークフリートが湖に行くと、白鳥が踊っている。
その美しい白鳥は、実はロッドバルトという悪魔のせいで
白鳥に姿を変えられたオデットだった。
その魔法を解くには、愛の力が必要だ、と王子に頼むオデット。
そこでオデットと結婚する約束を交わす王子だが、
婚約を発表するつもりだった舞踏会では、
悪魔ロッドバルトが送り込んだ偽の白鳥(黒鳥)オディールと
誤って婚約を交わしてしまう。
悪魔の策略を知った王子は
失意のオデットと共に、湖に身を投げる。
そこで王子の自己犠牲的な愛によって魔法が解け、白鳥たちは人間に戻り、
オデットと王子は天上で結ばれる…


うーん、オリジナルを知ってみても、やっぱり謎は解けませんね…。
ロッドバルト役となる人物が、マシュー・ボーン版には出てこないため、
ヘタをすると、王子が「動物を愛してしまうヤバいやつ」って感じも
しなくもありません。しかもその動物も同性だし…。
王子の女王への思いも、近親相姦を思わせるきわどさです。
(女王の愛を求める王子、という二人のダンスシーンでは
女王を組み敷く王子、とかかなりヤバめな場面もあり)
ベースには、英国のチャールズをイメージしているところもあるようです。
母親の寵愛を受けられなかった、悲しい王子……。


チャールズはともかくも、
このマシュー・ボーン版の王子は
切なさが出ていて、よかったですよ!
皇室の衣装を脱いだ王子が、白い肌着っぽい服にブーツで踊る姿は
なんだかモモヒキを履いたカトちゃん(ドリフターズ)みたいで
ちょっと笑えましたが、
全体に、線が細めな(弱っちい)王子の
“らしさ”をしっかり見せていた気がします。


それと、舞台の照明が「影」を印象的に取り入れていて、
ドラマチックでかっこよかった!
特に白塗りの宮廷内のシーンや、病院のシーン。
ライティングはリック・フィッシャー(Rick Fisher)という人が
担当しているようですが、ちょっと興味が湧きました。
あ、白鳥の衣装もカッコいいです。男版白鳥の良さが出てますね〜。
衣装と舞台装置はレズ・ブラザーストン(Lez Brotherston)担当、です。
今度は、オリジナル版に近い「白鳥の湖」も
見てみたくなってきました。