その川の向こう側へ

ブルース・スプリングスティーン「リバー」の歌詞、
やっぱり泣ける。

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俺は谷の底みたいな街からやってきた
父親の生き方をなぞるしかない街だった
俺とマリーは高校で出会い、
そうマリーが17歳の頃
緑の中へよくドライブしたね


俺たちは川へ行き
そこへ飛び込んで


そう、よくあの川へ行った


マリーから「妊娠した」ってだけ書いた手紙をもらい
俺の19歳の誕生日、労働組合に入って、上着を手に入れて
役場に行って、その上着を着てマリーと式を挙げた
祝福もなく、花もなく、ウェディングドレスさえなかったけれど
その夜、俺たちは川へ降りた
そして泳いだんだ
高校の頃、一緒に泳いだその川で


ジョンズタウンの会社で建設現場の仕事をもらった
でも不況のせいなのか、最近では仕事もあまりない
大事だと思っていたものは皆、消えてしまった
今となっては、昔を忘れたふりをするしかない、
そしてマリーもそのことに気付かないふりをするだけ
でも俺は、アニキの車を使って泳ぎにいったときのことは覚えている
日に焼けた彼女の肌を 水滴が伝って
夜更けに目がさめて、彼女の呼吸が判るくらい近くにまた抱きしめた


そんな記憶が呪いみたいに俺を苦しめる、
幻だったのか、もっと悪いものだったのか


川はもう干上がっていると知りながら
俺たちは川へと降りていく
昔、そうして泳ぎに行ったように

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電話してみたが

例のヤツに、連絡してみた。
ケータイに、職場メールに、自宅(とおぼしき)tel番号に。


しかし、いずれも連絡がつかない。

メッセージ残せるところに全て残したんだが、
とくに一週間以上たつ現在でも、向こうから連絡はナシ。


………まぁ、大丈夫だよ。


きっと、薬のせいで波があったりして、
治療で忙しかったりして、
連絡しにくかったりもするんだろう。

便りのないのはいい便り。
そう、言うよね。


ヤツのつまらねぇ癌が、笑い話になっていますように。


そして、何年後かに。


オレら仲間が集まって、皆で呑み会とかして。
「実はあの時、ヤツが癌だって手紙で知ってさぁ。
マジ、ビビッたけど、まさかこんなに元気になるとはねぇ。
手紙でガン疾病を打ち明けるなんて、大仰だよな〜。
ドラマの主人効果よ、って思ったよ(笑)」なんて
オレが打ち明け話をするんだよ。

うん。

その日が待ち遠しいよな、W氏!!!!!!!!!!!!!!

動いてみるか

ヤツからは、いまだ連絡がない。


頼りがないのはイイ知らせ、なんて思い込んでみようとするけれど
そういうわけにはいかないもので。


ちょうど連絡するきっかけもあることだし、
telしてみるか。


この苦悶の日々を、ジョークみたいに笑い飛ばせる日が来ることを信じながら。

連絡待ち

ヤツは、しばらく前にもらった手紙では、
今頃、いったん自宅療養に入っているタイミングのはず。
そしての手紙では、本手術に向けての1カ月ほどの自宅療養の間に会おう、と
書いてくれていた。


こちらからtelする感じでもなく。
静かに、待っている。
ヤツと会える日を。


ま、はれて元気になったらいつだって会えるんだけどね!!!!!!!!!!!!!

桜が違って見える

jackali2010-04-11


先日来、書いている友人のことがあってから。


折に触れ、景色が違って見える。



毎年見ている、通勤途中の桜。



その桜を見ていると、
来年、自分がどんな状況でこの景色を眺めているのか、と
ふと、こみあげてくるものがあったり。



きっと、ヤツと花見なんかしているだろう。
仲間とバカ騒ぎしたりしてるだろう。


咲き誇れ、桜。
そして、新たなる緑を芽吹かせろ。

四週間のあいだに

今日、先日書いた友人の名前から差し出された封書が届いた。



それは、私から出した「ごく遅い寒中見舞い」という名前の"エール"への
返信としての近況報告。


エール、といっても、こちらから言葉を綴った手紙を送ったわけではない。
「返信無用」と書いてきたヤツの手紙の心を(勝手に)おしはかり、
ただ、こちらが手紙を差し出した日付と、意味もない絵を描いたハガキを投函しただけ。
「お前の手紙、受け取ったぞ」ということを伝えたかった、
そして何か、ヤツが(その先がごく末梢的な一端(=オレ)だったとしても)世界に繋がっている、ってことを伝えかった。
それだけで、筆を執っては置き、執っては置き、を繰り返した後、
数日は悩んで投函せずに置いてあったハガキ。ようやく出したハガキ。
意味ある言葉なんて、書けるはずもなかった。



で、その友人からの手紙。
ポストにそいつの見慣れた文字が書かれた封筒を見た瞬間に、
「生きてる!」
そう思った。
もう、他の郵便物なんかにかまっていられない。
部屋にたどり着く前に、封を切る。



そこに綴られた、ヤツらしい口の悪さ一杯の文。
「わけわからん手紙よこしやがって」、的な。


どうやら、まずは初期手術が終わり、
4月末まで本手術に向けての事前治療をしておくらしい。
で、4月末から4週間ほど自宅治療、そして本手術とのこと。


そして、「その自宅治療の間に会おうか」と。






…会いたいよ、それは。
でも、会えばこれから先に待っている本手術のことを、
そしてその先のことが思い浮かばざるを得ないだろう。


そこで会うことが、はたして、いいのか。
むしろ、「ホントに退院してから会おうぜ」と言うべきじゃないのか。
ヤツが、「今より先」へと視線を向けるようなことを
オレはすべきじゃないのか。



…でも、多分、オレはヤツからその自宅治療の間に
連絡があったら、会うだろう。
だって、それは会いたいから。
会って、(何を言うかは全く判らないけど)何かを話したいから。



その時、少しでもヤツが「それならもっと先まで生きなきゃ」と
思えるような言葉が口に出せるよう、
あれこれ悩んでみることにします。


そうはいっても、多分、実際に会ったら
こうして考えていることなんて、
ゼロになってしまうんだろうけどね。


その瞬間、オレの口から出る言葉が、
ヤツにとって、ほんの少しでもパワーになりますように……!



コトダマの力を、本気で信じたくなった、この今夜。